豆知識

【伐採】受け口・追い口・ツルを理解して安全に倒す方向をコントロール!

アイキャッチ受け口追い口ツル

木を安全に倒すには、ただ力任せに切るだけでは不十分です。なかでも「受け口」「追い口」「ツル」といった構造や切り方の基本を知っているかどうかで、伐採作業の仕上がりや安全性は大きく変わります。

この記事では、これら三つのポイントの役割と具体的なテクニックをわかりやすく解説し、より確実で安全な伐採の実現をサポートします。複雑な木の状態や難しい場面にも応用できる知識も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

受け口・追い口・ツルの基本構造と伐採の考え方

木を安全かつ計画的に倒すためには、「受け口」「追い口」「ツル(ヒンジ)」の三つの要素を正しく理解し、活用することが重要です。

ここでは、それぞれの特徴と役割、そして伐採作業全体における位置付けについて詳しく解説します。

受け口とは

受け口は、木を倒したい方向に向かって根元部分にV字型に入れる切り込みです。伐採作業の最初に行うもので、木の倒れる方向や動きをコントロールするための大切な役割を持っています。

受け口の役割

  • 木の倒れる方向を明確に決める

  • スムーズに倒れるための導線を作る

  • 安全な作業の第一歩となる

受け口作りのポイント

  • 木の直径の1/4~1/3程度まで切り込む

  • 受け口の開き角度は70~90度が目安

  • 水平切りと斜め切りを組み合わせて、きれいなV字型を作る

追い口とは

追い口は、受け口を作った反対側から、木の幹に水平に切り込む部分です。この切り込みによって木の自重が支えられなくなり、倒れるきっかけを与えます。受け口と連動して作業することで、木が意図した方向に倒れるようにコントロールできます。

追い口の役割

  • 木を実際に倒すための仕上げ

  • ツル(ヒンジ)を残すためのカット

  • 倒れるタイミングを調整する

追い口作りのポイント

  • 受け口より2~5cm高い位置から切り込む

  • ツルを均等に残す

  • チェーンソーやノコギリの刃が挟まれないよう注意する

ツル(ヒンジ)とは

ツルとは、受け口と追い口の間に意図的に残す未切断部分のことです。英語ではヒンジとも呼ばれ、木が倒れる際の安全性とコントロールを担う最重要ポイントです。

ツルの役割

  • 木が倒れる方向を最後までコントロールする

  • 倒木の勢いを調整し、裂けや跳ね返りを防ぐ

  • 木が途中でねじれるのを防ぐ

ツルを残すコツ

  • 木の直径の10%程度を目安に残す

  • 幅と厚みを均一に整える

  • 切り過ぎてしまうとコントロールが利かなくなるため注意が必要

伐採における三要素の連携

受け口・追い口・ツルは、伐採作業においてそれぞれが密接に関係し合い、正しい順序と形で作ることで初めて安全な倒木が可能となります。

三要素を活かした基本の流れ

  1. 倒す方向と安全確認を行う

  2. 受け口を計画通りの角度と深さで作る

  3. 受け口の反対側から追い口を入れ、ツルを残す

  4. 木が動き始めたら速やかに退避する

木を倒すための切り方|実践的な手順とポイント

木を安全に、そして思い通りの方向に倒すためには、切り方の基本をしっかりと理解し、正しい順序で作業を進めることが大切です。ここでは、実践的な伐採手順とポイントを具体的に紹介します。

伐採作業を始める前の準備

作業前には以下の点を必ず確認しましょう。

  • 倒したい方向に障害物がないかチェックする

  • 作業エリアに人がいないか確認する

  • 退避経路を複数確保しておく

  • 必要な道具(チェーンソー、クサビ、ロープなど)が揃っているか確認する

受け口の作り方

受け口の切り方によって、木の倒れる方向が大きく左右されます。正確に切り込むことが、安全な伐採のポイントです。

受け口作りの手順

  1. 水平切りを入れる
    倒したい方向の根元に、木の直径の1/4~1/3の深さで水平に切り込みます。

  2. 斜め切りを入れる
    水平切りと交わるように、上または下から斜めに切り込みを入れ、V字型の切り口を完成させます。

  3. 角度を調整する
    受け口の開き角度は70~90度が目安です。V字型が広すぎたり狭すぎたりしないように整えましょう。

覚えておきたいポイント

  • 切り込みが浅すぎると倒れにくく、深すぎると木の強度が落ちて危険です。

  • 受け口はまっすぐ、丁寧に作る

追い口の入れ方と注意点

受け口ができたら、反対側から追い口を入れていきます。追い口の深さや位置がズレると、木の倒れる方向やタイミングが狂う原因になります。

追い口作業の流れ

  1. 受け口より2~5cm高い位置から水平に切り込む

  2. ツル(ヒンジ)が均等に残るように調整する

  3. 木の動きに注意しながら、切り込みすぎないよう慎重に進める

  4. 必要に応じてクサビを追い口に差し込み、倒す方向を補助する

退避のタイミング

  • 木が動き始めたら、すぐにチェーンソーを抜いて安全な退避ルートへ移動する

  • 退避は木に対して斜め後方45度が安全

正しい順序とポイントを押さえて作業することで、初心者でも安全かつ計画的に木を倒せます。最初は細い木や低い木で練習し、少しずつ慣れていくことが失敗を防ぐ近道です。

追い口のコツとヒンジ(ツル)を活かす倒し方

追い口とヒンジ(ツル)の精度が、木の倒れ方を大きく左右します。正しい方法で追い口を入れ、ツルの役割を活かせば、木を狙った方向に安全かつスムーズに倒すことができます。

追い口を入れる際の基本ポイント

1. 受け口より2〜5cm高い位置から切る

追い口は、必ず受け口よりも少し高い位置で切り始めます。これにより、ツルが残りやすくなり、木が倒れる際にヒンジが働いてコントロールしやすくなります。

2. 水平にまっすぐ切る

チェーンソーやノコギリの刃をできるだけ水平に保ち、受け口の端と端を結ぶイメージでカットします。水平に切ることで、ツルの厚みが均一になり、倒木のコントロールが効きやすくなります。

3. ツル(ヒンジ)を残す

ツルとは、受け口と追い口の間に意図的に残す未切断の部分です。このツルがヒンジの役割を果たし、倒れる方向を最後まで制御します。

ツルの理想的な厚み
  • 木の直径の10%程度(例:直径30cmなら3cm程度)

  • 厚みが不均一だと、木がねじれて倒れる危険が高まるため、均等に残す

4. 切り過ぎに注意する

追い口を深く入れすぎると、ツルがなくなり、木が思いがけない方向へ急に倒れることがあります。常にツルが均一に残っているか、こまめに確認しながら作業を進めましょう。

クサビの活用で倒す方向を補助

追い口を切り進めて木がなかなか動かない場合や、刃が挟まれそうな時は、クサビを利用すると安全です。クサビを追い口に差し込み、ハンマーで軽く叩くことで、木の重みを分散しつつ、倒れる力を補助できます。

クサビの使い方

  • 追い口を入れた隙間にクサビを差し込む

  • 少しずつ叩き込み、木が動き始めたらチェーンソーを抜いて退避する

  • 無理な力を加えず、慎重に作業する

よくある失敗例と対策

  • 追い口を深く切りすぎてツルがなくなる
    → 追い口は慎重に、少しずつ切り進めて厚みを確認する

  • ツルの厚みがバラバラになる
    → 水平にカットし、端から端まで均一に残るよう調整する

  • チェーンソーの刃が挟まれる
    → クサビを早めに使い、切り口が閉じるのを防ぐ

木の性質や状態に合わせた伐採の応用テクニック

木の伐採はすべてが教科書どおりに進むとは限りません。木の状態や形、設置環境によって、安全かつ正確に倒すための方法も工夫が必要です。ここでは、曲がった木や太い木、複雑な枝ぶりなど、さまざまなケースごとの応用テクニックを紹介します。

曲がった木や傾いた木を倒す場合

曲がった木や自然に傾いている木は、倒れる力が偏りやすくコントロールが難しいことがあります。

応用ポイント

  • 木の傾きや重心をよく観察し、倒れる方向を見極める

  • 基本は傾いている方向に倒すのが安全

  • どうしても逆方向に倒したい場合は、ロープやクサビを使い慎重に力を加える

  • 受け口と追い口の切り方も、力がかかる側のツルをやや厚めに残すと安定しやすい

太い木や古木の伐採テクニック

直径が大きい木や年数の経った古木は、単純な切り方では倒しきれないこともあります。

応用ポイント

  • 芯抜き(ハートカット)
    追い口を入れる前に中心部(芯)を先に小さく切り抜いておくと、チェーンソーの刃が挟まれにくく、安全に作業できる

  • クサビを複数使いながら、少しずつ追い口を進める

  • 太い木ほどヒンジの厚みを適正に残すことが重要

枝ぶりが複雑な木や二股に分かれている木

枝が偏って伸びている木や、幹が二股に分かれている木は、倒れる方向や力のかかり方が予想しづらく危険です。

応用ポイント

  • 受け口を広めに作り、枝の重さが集中する側にツルを厚めに残す

  • 倒す方向をしっかり計画し、必要に応じてロープやワイヤーでサポート

  • 二股の場合は、まず片方の枝を伐採し、バランスを取ってから本幹を倒す

幹がねじれている木や枯れた木

幹がねじれている木や枯れ木は、通常よりも裂けやすく、倒れるときの動きが予測しにくくなります。

応用ポイント

  • 切り口が裂けやすいので、ツルを少し厚めに残す

  • 作業中は常に木の動きに注意し、いつでも退避できる体勢で

  • 枯れ木は、軽くて不規則に倒れることがあるため、特に慎重に

応用テクニックのまとめ

  • どんな木でも基本は「受け口」「追い口」「ツル」を丁寧に作ること

  • 木の性質や状態に合わせて、切り方や道具の使い方を柔軟に調整する

  • 少しでも危険を感じた場合は、プロに相談する勇気も大切

こうした応用テクニックを知っておくことで、難しい木でも安全で確実な伐採につながります。状況ごとに最適な方法を選びながら、無理なく作業を進めましょう。

クサビ・ロープなど補助道具の上手な活用法

伐採作業では、受け口・追い口・ツルだけで倒れない木や、より安全に倒したい場合、補助道具の活用がとても重要です。クサビやロープ、ワイヤー、プラロックなどの道具を上手に使うことで、倒木のコントロール性や安全性が格段に高まります。

クサビの使い方とポイント

クサビは、追い口に差し込んで木を狙った方向へ倒すために使う道具です。特に、木の重みで切り口が閉じてチェーンソーが挟まれそうなときや、思うように木が動かないときに活躍します。

クサビの基本的な使い方

  • 追い口の切り込みが進んだら、隙間にクサビを差し込む

  • ハンマーや斧の背で少しずつクサビを叩き入れる

  • 必要に応じて2本目のクサビを使い、バランスを取る

  • 木が倒れ始めたら、すぐに作業エリアから離れる

クサビの選び方

  • 樹脂製と金属製があり、一般的な伐採には軽くて扱いやすい樹脂製が便利

  • 太い木や硬い木の場合は、頑丈な金属製クサビが有効

ロープやワイヤーの活用術

ロープやワイヤーは、倒木の方向を補助したり、倒れる勢いを制御したりするのに役立ちます。特に、真っすぐ倒れない木や、建物や電線が近くにある場合は必須の道具です。

ロープ・ワイヤーの具体的な使い方

  • 木の高い位置や倒したい方向側にロープを結ぶ

  • 2人以上でロープを持ち、倒したい方向へ引っ張りながら追い口を入れる

  • ワイヤーの場合は専用のワイヤースリングやプラロックを使ってしっかり固定

  • 必要に応じて滑車(プーリー)を使い、引く力を分散する

ロープ・ワイヤーの注意点

  • 作業中は常にロープのたるみや引く力を確認する

  • 切断や滑落事故防止のため、必ず耐荷重に合ったものを選ぶ

  • ロープが木に食い込まないよう、保護シートなどを使うと安全

プラロックや滑車などの補助器具

近年は、より安全かつ効率的に倒木作業を行うための補助器具も増えています。
プラロックは、ロープやワイヤーのテンションを一定に保ちやすく、滑車(プーリー)と組み合わせることで力仕事を軽減できます。

便利な補助道具の例

  • プラロック:ロープの緩みを防ぎ、倒木方向をコントロールしやすくする

  • 滑車(プーリー):ロープ作業時に摩擦を減らし、効率良く力を伝達できる

補助道具を使う際の共通ポイント

  • 必ず2人以上で作業する

  • 道具の破損や劣化を事前にチェックする

  • 無理な力を加えず、計画的に作業を進める

まとめ

この記事では、受け口・追い口・ツルについて詳しく解説し、実際の伐採作業に役立てる方法もお伝えしました。

  • 伐採は「受け口」「追い口」「ツル」を基本に、木や現場の状況ごとに切り方や道具を柔軟に選ぶことが大切です。

  • 準備・確認を怠らず、無理な作業はせず、必要ならプロに相談する姿勢を忘れずに、安全第一で進めましょう。