果樹の剪定

ザクロの剪定|時期・枝の見極め・初心者向けポイント

アイキャッチザクロの剪定

midori
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ザクロの剪定って難しいの?
itsuki
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花も実も楽しめるので人気の果樹ですね。育て方を詳しく見てみましょう。

鮮やかなルビー色の果実が魅力のザクロは庭木としても人気が高く、私達の目を楽しませてくれますが、適切な剪定により、さらに豊かに実をつけ美しい樹形を保つことができます。

本記事では、初めての方でも安心してできるザクロの剪定方法を分かりやすく解説します。

ザクロ(柘榴・石榴)について

ザクロの花

ザクロは西南アジア原産で、トルコやイラン、北インドのヒマラヤ山地などで生まれたと考えられており、日本には平安時代に中国を経由して伝わったとされています。

ミソハギ科ザクロ属に属する落葉小高木で、自然の状態では5〜12mほどに成長しますが、庭木としては剪定で2〜3m程度に抑えられます。

ザクロの開花時期はちょうど梅雨の時期である6月から7月頃で、肉厚で硬い萼に包まれた、鮮やかな赤朱色のベル型をした花を咲かせます。

オレンジやピンク色の花を咲かせる品種もあり、その美しさから観賞用としても人気です。

花が落ちた後も肉厚な萼が王冠のように残り、やがてその下から直径約5~12cmの球状果実が成長し、10月頃に外側の皮は美しいルビー色に変化します。

果実の中にはたくさんの小さな種子が詰まっており、それぞれが透き通った淡い紅色のゼリー状の仮種皮(種衣)に包まれています。私たちが食べるのはこの仮種皮の部分で、甘酸っぱくプチプチとした独特の食感が楽しめます。

種子は硬いものが多いですが、イラン産の品種など、種が小さく柔らかく、種ごと食べられるものもあり、ザクロは、ビタミンC、カリウム、そしてポリフェノール(アントシアニンやエラグ酸)を豊富に含み、その抗酸化作用から健康食品としても注目されています。

栽培と歴史

ザクロの実

ザクロは非常に古い歴史を持ち、古代から豊穣の象徴とされてきました。また、非常に長寿な植物で、200年以上生きる木もあると言われています。

ザクロは日当たりを非常に好む植物で、日光をたくさん浴びるほど花つきや実つきがよくなります。水はけの良い土壌を好み、一度根付けば地植えの場合は水やりはほとんど不要です。

比較的丈夫で、多少痩せた土地でも育ちます。適度な湿度と有機質を含む土壌が理想的で温暖な気候を好みますが、比較的耐寒性もあるため、日本の多くの地域で栽培が可能です。

仏教では、鬼子母神(きしもじん)が人肉を食べるのをやめるよう、仏様がザクロの実を与えたという有名な説話が残されています。

ザクロの品種解説

ザクロには、食用から観賞用まで、さまざまな品種があります。

品種名 特徴
甘ザクロ 甘みが強く、果肉が多くやわらかい、生食向きで家庭用に最適
渋ザクロ 渋みがあり、果汁を加工してジュースやシロップに利用
花ザクロ(観賞用) 実がならないか、極めて小さいが、八重咲きの美しい花が特徴
豊産ザクロ 日本で人気のある食用品種で、耐寒性・耐病性が高く、収穫量も安定している

栽培のポイント

ザクロは日当たりと風通しがよい場所で育てることで、果実のつきがよくなります。

  • 日照条件:1日6時間以上、直射日光の当たる場所が理想
  • 土壌:水はけの良い弱酸性〜中性(pH6〜7程度)
  • 耐寒性・耐暑性:どちらも強く、東北南部から九州まで栽培が可能
  • 乾燥への耐性:あるが、果実肥大のためには適度な水分が必要

ザクロの受粉方法

ザクロは基本的に自家受粉が可能ですが、実つきを良くしたい場合は人工授粉を行うのもおすすめで、5〜6月に花が咲いたら、綿棒や筆を使って、雄しべの花粉を雌しべに優しく移してあげましょう。

鉢植えザクロの育て方

スペースが限られるご家庭や、ベランダでも育てやすいのが鉢植えの魅力です。

最初は8〜10号鉢(直径24〜30cm)がおすすめで、根詰まりを防ぐため、2〜3年ごとに赤玉土6:腐葉土4または市販の果樹用培養土に植え替えます。

鉢植えは南向きのベランダや日当たりの良い軒下に置き、土の表面が乾いたタイミングでたっぷり水を与えます。夏場は朝と夕方の2回に分けて水やりを行い、2月・5月・10月には緩効性肥料を施すのがポイントです。

ザクロの剪定について

剪定の目的

  • 樹形を整える
  • 実をつける枝を育てる
  • 風通しを良くして病気を予防する

主な剪定時期は1月〜2月

ザクロの剪定は、冬と夏の2回が基本です。

時期 剪定内容
1月〜2月(冬剪定) 落葉後。太枝の整理と樹形の更新、主な剪定はこの時期に
7月頃(夏剪定) 混み合った枝の整理。実の成長を妨げないよう軽めに

剪定の方法とポイント

切るべき枝を見極め、全体のバランスを意識して剪定しましょう。

剪定対象の枝とコツ

以下のような枝は剪定して構いません。

  • 徒長枝:真上に勢いよく伸びた枝
  • 内向き枝:木の中心に向かって伸びる枝
  • 交差枝・重なり枝:ほかの枝とこすれやすい
  • 古枝・枯れ枝・弱い枝:実がつきにくく病気の原因に

残すように意識しなければならないのは、ザクロの実がつく樹齢2〜3年の枝で、強剪定を行う場合は、全体の2〜3割以内に抑えるのが成功のコツです。

肥料・水やり・病害虫対策

肥料について

ザクロは肥料を比較的よく吸収し、適切な施肥を行うことで生育が促進され、実つきも良くなります。

株元を中心に円を描くように肥料をばらまき、軽く土に混ぜ込むか、土を掘って肥料を埋め戻し、肥料が直接根に触れないように注意し、根焼けを防ぎましょう。

肥料の種類

  • 有機質肥料(油かすや鶏糞、堆肥など)
    土壌改良効果も期待でき、じっくりと栄養を供給したい時向け
  • 速効性化成肥料特
    定の時期に集中的に栄養を補給したい時向け
  • バランス型肥料
    NPK(窒素・リン酸・カリウム)が均等、またはリン酸とカリウムが多めに配合されたものが理想的で、窒素分が多すぎると、花つきや実つきが悪くなることがあるので注意する

地植えの場合

3月頃(春肥): 新芽が動き出す前に、成長期の栄養を補給します。有機質肥料または速効性化成肥料を株元に施します。

10月頃(お礼肥): 収穫を終えた後に、来年のための体力を回復させ、花芽形成を促すために与えます。有機質肥料がおすすめです。

鉢植えの場合:

3月頃(春肥): 地植えと同様に、新芽の成長を促します。

7月頃(追肥): 開花から結実にかけての栄養補給として与えると果実が大きくなるのを助けます。

10月頃(お礼肥): 収穫後、来年に備えて養分を補給します。 鉢植えは地植えに比べて栄養が不足しやすいため、回数を増やして与えるのが一般的です。

水やり

ザクロは乾燥に比較的強い植物ですが、特に若木や鉢植えの場合は適切な水やりが重要です。

地植えの場合

植え付け直後は、根がしっかりと張るまでたっぷりと水を与え、根付いた後は、基本的に水やりの必要はなく、自然の雨水で十分です。

ただし、夏場の猛暑で雨が降らず、土が乾燥しきって葉がしおれてくる場合は、適宜水を与えてください。

鉢植えの場合

土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与えるのが基本、毎日少しずつ与えるよりも、一度にしっかりと与えることで、根が深く伸びるのを促します。

夏は、気温が高く土が乾きやすいので、朝晩の2回水やりが必要になることもあり、特に開花期や果実が大きくなる時期は、水分を多く必要とします。

冬は、成長が鈍る休眠期に入るため、土が完全に乾いてから数日置いてから与える程度で十分です。過剰な水やりは根腐れの原因になるため、特に注意が必要です。

水やりのポイント

日中の暑い時間帯の水やりは、水がお湯になり根を傷めたり、すぐに蒸発したりするので避け、涼しい時間帯(早朝や夕方)に行いましょう。

主な病気と対策

ザクロは比較的病害虫に強い植物ですが、適切な管理を怠ると発生することがあり、日当たりと風通しを良くすることが最大の予防策です。

葉腐病(根腐れ)

葉が黄色くなり、しおれて黒ずみ、最終的に落葉します。根が軟らかく褐色に変色し、茎や株元が腐ることもあります。

主に湿潤で多湿な環境、特に水のやりすぎや水はけの悪い土壌で繁殖する菌類によって引き起こされるので、 植え付け時に水はけの良い土を選び、土が乾いてから水を与えましょう。

うどんこ病

葉や茎の表面に白い粉をまぶしたようなカビが生えます。

発生初期は重曹水(水4.5リットルに重曹小さじ1/2、液体石鹸小さじ1を混ぜたもの)をスプレーする、または市販の殺菌剤を使用し、剪定で枝を間引き、風通しを良くします。

主な害虫と対策

カイガラムシ

茎や葉に小さな褐色や白い塊のような虫が集まり、植物の汁を吸います。葉が黄色くなり、生育が阻害され、排泄物である甘露によって「すす病」が発生することもあります。

見つけ次第すぐに柔らかいブラシや布、綿棒などでこすり落としたり、勢いのある水で洗い流すのも有効です。

園芸用油(マシン油乳剤)を休眠期に散布して虫を窒息させて駆除したり、殺虫石鹸を目に見えるカイガラムシに直接散布します。

テッポウムシ(カミキリムシの幼虫)

進行すると幹内部が食害され、木が弱ったり枯れたりします。

株元や幹を定期的にチェックし、木屑や樹液が出ていないか確認し、見つけ次第捕殺し、成虫(カミキリムシ)を見つけたら捕殺します。

ゴマダラメイガの幼虫

果実に食い込み、中を食い荒らすので果実が小さいうちに袋をかけることで、害虫の侵入を防ぎます。

ザクロの剪定|まとめ

本記事ではザクロの剪定について解説しました。

ザクロの剪定|まとめ
  • 品種は甘ザクロや豊産ザクロがおすすめ
  • 剪定は冬と夏に分けて実施し、実をつける枝(2〜3年枝)を見極めて残す
  • 肥料は年2〜3回、水やりは鉢の乾燥を見て調整

ザクロは比較的育てやすく、剪定や日頃の管理をきちんと行えば、ご家庭でも美しい花やたくさんの実を楽しむことができるので、ぜひ栽培にチャレンジしてみてください。