適切な剪定を行うと、庭木はより長く健康に成長し美しい姿を保つことができますが、植物にダメージを与えることになるので時期と合っていないと大切な庭木が枯れることもあります。
この記事では剪定の基本的なポイントについて解説します。

剪定を行う目的
何を目的に剪定を行うのかを考え、決めてから行うと切り過ぎや失敗しにくくなるので、作業前に以下のどれに当てはまるのかまず考えてみましょう。
- 生育の調整
- 樹形の調整
- 開花・結実の促進
- 病害虫の予防
- 落下枝による事故予防
生育の調整や樹形のためなら不要な枝や徒長枝を、事故予防のためなら枯れ枝や折れやすい枝を剪定しますし、開花・結実の促進のためなら花芽のついた枝を見分けて適切な場所で剪定する必要があります。
庭木の種類別・剪定の時期
剪定を行う時期は樹種によって大きく異なり、適切な時期に剪定を行うと樹木への負担を最小限に抑えられる上に剪定の効果を最大限に引き出すことができます。
剪定時期の基本
植物へのダメージを考慮して、植物の成長が盛んな時期と真夏・真冬を避けるのが原則です。
落葉樹は休眠期の冬(12月~2月)が適期
葉が落ちているため、枝の配置が分かりやすく剪定がしやすいのと、休眠期は樹木の活動が鈍く、剪定によるダメージを最小限に抑えられますが、寒冷地では凍結によるダメージがあるので厳冬期は避けたほうがよいでしょう。
- 花が主役の落葉樹(梅・桜・モクレンなど)
原則として開花後すぐに剪定を済ませると、次年の花芽が育ちやすくなる - 樹形を楽しむ樹木(カエデ・ハナミズキなど)
自然風の樹形を残しつつ、軽剪定を年1回行うのが理想的
常緑樹は春(3月~4月)と秋(9月~10月)が適期
常緑樹の剪定は春と秋に行うと、樹木の成長が比較的穏やかなのと剪定によるダメージから回復しやすく、おすすめです。
細かく言えば、常緑広葉樹の剪定時期は3月下旬~4月下旬か5月下旬~6月、針葉樹の場合は3~4月頃にしっかりと剪定をすと良いですが、樹種により異なる場合があるため、予め調べてから行うことをおすすめします。
針葉樹は春(3月〜4月)と秋(9月〜10月)が適期
針葉樹の場合、冬は寒さで切り口が傷みやすく、夏は樹液の流出が多いため、強剪定は春、軽い整枝は秋が良く、特にマツ類は3〜5月のみどり摘みという新芽の選別作業を行います。
針葉樹は頂芽優勢の性質が強く、頂部(芯)を切ると不格好になりやすいため、主幹(中心の枝)は残して側枝のみを整理するのが基本ですが、ヒノキ・スギ・コニファー類は特に再生力が低い傾向にあるので切りすぎず自然な樹形を尊重するのがポイントです。
枝抜きは途中で切ると、みっともない二股の枝になるので枝の付け根からきれいにカットし、必ず葉がついている箇所のすぐ上を意識して切るとよいでしょう。
剪定に必要な道具について
道具について
- 園芸用手袋
- 剪定ノコギリ:細い枝や葉の剪定用
- 剪定鋸:直径1cm以上の太い枝の剪定用
- 癒合剤:太い枝の切り口に塗布
- ゴミ袋:剪定した枝などを入れる
- 熊手またはほうき
服装について
庭木の剪定なら通年長袖長ズボンを着用していれば大丈夫ですが、夏や冬などは必要に応じて熱中症対策や防寒対策もできる服装にしましょう。
太い枝をチェーンソーで切る場合は専用の装備が必要です。
専用の道具について
高所の枝を切る場合は高枝切り鋏を、生垣を切るなら刈り込み鋏を準備し、さらに電動のものを使用すると楽に作業できます。

基本的な剪定方法と注意点
基本の剪定方法
透かし剪定(間引き剪定)
混み合った枝や不要な枝を根元から切り取り、風通しや日当たりを良くする剪定で、樹木の内部まで光や風が届くようになるため、病害虫の発生を抑えつつも自然な樹形を維持しやすく、多くの樹木に適しています。
主な不要枝の種類とその特徴、剪定の理由、切り方をまとめました。
種類 | 特徴・見分け方 | 剪定の理由 | 基本的な切り方 |
---|---|---|---|
枯れ枝 | 葉がなく、乾燥して折れやすい枝 | 腐朽菌の侵入源となり、他の健康な部分に影響を与える可能性がある | 根元から完全に切り取る |
ひこばえ | 根元や地中から勢いよく伸びる細い枝 | 主幹の養分を奪い、樹勢を弱める | 根元から切り取る |
胴吹き枝 | 幹から直接、勢いよく伸びる枝 | 樹形を乱し、幹の内部の風通しを悪くする | 根元から切り取る |
徒長枝 | 他の枝よりも極端に長く、真上に勢いよく伸びる枝。花芽をつけにくい。 | 樹形を乱し、養分を無駄に消費する | 根元から切り取る。途中で切るとさらに枝が密生する原因となる |
ふところ枝 | 樹冠の内部で弱々しく上部に伸びる細い枝 | 風通しや日当たりを悪くし、病害虫の原因となる | 根元から切り取る |
絡み枝 | 他の枝に絡むように伸び、枝同士がこすれ合う枝 | 摩擦で傷ができ、そこから病原菌が侵入しやすくなる | 根元から切り取る |
逆さ枝 | 外側に向かって伸びず、幹の方に向かって逆方向に伸びる枝 | 樹形を乱し、他の枝の成長を妨げる | 根元から切り取る |
立ち枝 | 真上に向かって勢いよく伸びる枝 | 樹形を乱し、花付きを悪くする | 根元から切り取る |
下り枝 | 下に向かって伸びる枝 | 樹形を乱し、地面に接すると病気の原因となる | 根元から切り取る |
平行枝 | 同じ方向に上下に並んで伸びる枝 | 養分や日光の競合が起こる | 勢いの良い方、または樹形に合わない方を根元から切り取る |
かんぬき枝 | 左右の枝が主幹を貫いて一直線になるように生えた枝 | 樹形を不自然にし、養分供給のバランスを崩す | 根元から切り取る |
車枝 | 幹の同じ高さから4本以上の枝が水平に伸びたもの | 枝が密集し、風通しが悪くなる | 根元から切り取る |
切り戻し剪定
枝の途中を切り、樹高を低くしたり、枝の分岐を促したりする剪定で、樹形をコンパクトに保ち、花の数を増やしたり、樹勢を調整したりする目的で行われますが、強く切り戻すと新芽が多く出て樹形が乱れる可能性があるので注意が必要です。
刈り込み剪定
生垣や庭木全体の形を整えるために、表面を刈り込む剪定で、主に常緑樹や針葉樹に行われ、均一な樹形を作り出すことができるので刈り込む時期や頻度を調整することによって、樹木の成長をコントロールできます
強剪定
樹木の生育を抑制したり、樹形を大きく変えたりするために、太い枝を大胆に切り落とす剪定、主に落葉樹の休眠期に行われ、樹勢の回復や若返りを促す効果がありますが、樹木への負担が大きいため、慎重に行う必要があります。
弱剪定(軽剪定)
樹形を軽く整えたり、不要な枝を少しだけ切り取ったりする剪定で、生育期間中に行われ、樹木の負担を最小限に抑えながら、樹形を維持します。
枝おろし剪定
剪定バサミでは切ることが難しい太い枝を、チェーンソーなどを使い切り落とす方法です。
剪定の注意点
基本は透かし剪定を行い、不要な枝を切れ味の良い鋏やノコギリで少しずつ根元から切り落としていきますが、一度に多くの枝を切ると樹木に負担がかかるので切り過ぎに注意しましょう。
太い枝を切る場合は1回で切ろうとすると樹皮が裂けて切り口が大きくなる傾向にあるので、数回に分けて切ることで切り口が滑らかになり、さらに切り口には癒合剤を塗布して保護すると植物へのダメージを最小限に抑えられます。
高所での剪定作業は危険を伴うため、脚立を使用する際は安定した場所に置き、できれば何かあった時のために2人以上で作業したほうが良いでしょう。
剪定後の手入れ
剪定後は要観察
剪定後の樹木には、適切なアフターケアを行って回復を促します。
- 水やり:土の表面が乾いたらたっぷりとやる
- 肥料:緩効性でリン酸やカリウムの多い肥料を与える
- 切り口の保護:癒合剤を塗布し、病害虫の侵入を予防
定期的な観察を行い、異常があれば早めに専門家に相談しましょう。
剪定の基本まとめ
こちらの記事では剪定の基本的な知識をまとめました。
- 植物によって異なるが、真夏・真冬を避けて適切な時に剪定する
- 目的を決めて、切れ味の良い道具で少しずつ剪定を行えば失敗しにくい
この記事で解説した剪定の基本と注意点を参考に、庭木のお手入れに挑戦してみてください。