ラベンダーは香りが良く見た目も美しいことから、庭づくりに人気の高い植物です。とくに地植えにすると育てやすく、花壇を華やかにしてくれます。しかし、その反面「気づいたら広がりすぎていた」「剪定がうまくいかずに枯れてしまった」などの悩みも少なくありません。
この記事では、ラベンダーの地植えで広がる理由や、剪定で美しく整えるためのコツを詳しく解説していきます。
ラベンダーは地植えで増える?その理由と注意点
ラベンダーはもともと地中海沿岸地域に自生していた多年草で、乾燥した土地や日当たりの良い場所を好みます。そのため、日本でも日照の良い庭に地植えすれば元気に育ち、年々株が大きくなっていきます。条件が合えば1株でもボリューム感が出て、見応えのある景観に仕立てることも可能です。
しかし、その反面「思った以上に横に広がってしまった」「他の植物のスペースがなくなった」といった悩みも出てきます。ラベンダーの多くはこんもりとドーム状に成長し、枝が横に張り出すため、植え付け間隔を誤ると、周囲と密集しやすくなるのです。
横に広がりやすい品種に注意
とくにイングリッシュラベンダーやグロッソなどの大型品種は、根の広がりとともに枝もよく伸びるため、60cm以上の間隔を空けて植えるのが基本です。逆に、コンパクトな品種を選ぶことで、限られたスペースでも管理がしやすくなります。
株分けや剪定をしないと増え続ける
地植えで放任していると、ラベンダーは枝葉が四方八方に広がり、風通しが悪くなって病害虫が発生しやすくなるほか、下葉が枯れて木質化し、見た目も悪くなってしまいます。これを防ぐには、定期的な剪定や数年ごとの株の更新が必要になります。
地植えラベンダーの根の張り方と管理のコツ
ラベンダーは根の張り方にも特徴があり、地植えすると思った以上に広範囲に根を張ることがあります。剪定や植え替えが不要に思えるほど強健ですが、根の張り方を知っておくことで植える場所や管理の方法が変わってきます。
ラベンダーの根は浅く広がる
ラベンダーの根は主に地表近くに浅く広がる「浅根性」です。縦に深く根を張る植物ではないため、水はけの悪い場所や湿気の多い場所では根腐れを起こしやすくなります。粘土質の土や水はけの悪い庭では、盛り土や高植えにするなどの工夫が必要です。
また、浅く広がる根の性質上、雑草との競合にも弱く、周囲の除草やマルチングによる対策が求められます。芝生のそばに植えると、芝と根が競合して育ちが悪くなることもあるので、ある程度距離をとった場所に植えるのが理想です。
根詰まりと更新にも注意
地植えとはいえ、ラベンダーが長年同じ場所にあると根詰まりのような状態になり、土の中の通気性が悪くなって根の健康が損なわれます。およそ3〜5年を目安に、株分けや植え替えを行うと、根が新たに活性化しやすくなります。
根の張りに適した土づくり
水はけを良くするためには、植える前に土壌改良をしておくのが基本です。腐葉土や軽石、パーライトなどを混ぜ込んで、根が張りやすいふかふかとした土に整えましょう。特に梅雨時や冬の凍結によるダメージを避けるためにも、根が蒸れにくい構造を作ることが大切です。
ラベンダーが広がりすぎたら?剪定で整えるタイミングと方法
地植えのラベンダーは年々株が大きくなり、枝が四方に伸びて見た目が乱れやすくなります。タイミングと方法を押さえておけば、誰でも無理なく剪定できます。
剪定の基本は「年2回」
ラベンダーは基本的に春と夏(または初秋)の年2回の剪定が理想的です。
春の剪定(3月〜4月)
冬越しを終えた株に対して、傷んだ枝や枯れ枝を取り除きます。株元から芽吹いている新芽の少し上で切ることで、風通しが良くなり、梅雨前に病害虫のリスクを減らせます。
夏〜初秋の剪定(7月〜9月)
花が咲き終わった後の剪定は、次のシーズンに向けた整枝を目的とします。この時期は特に、広がった枝を切り戻す重要なタイミングです。花茎の下の葉がある部分までしっかりカットして、株全体の高さと幅を整えます。
ラベンダーは木質化する前に整える
剪定せずに放置すると、枝の下部が茶色くなって木質化が進行し、剪定しても新芽が出にくくなります。木質化した部分は基本的に再生しないため、まだ緑色でしなやかな部分を残して剪定することがポイントです。
強剪定はどこを切る?やり方とポイントを解説
ラベンダーの強剪定は、枝数が増えすぎて株が乱れたときや、木質化が進みすぎたときに行う剪定方法です。一般的な剪定よりも切り戻す量が多くなるため、株にかかる負担も大きく、正しいやり方とタイミングを守ることが重要です。
剪定前に確認すること
剪定を始める前に、まず以下の点をチェックしましょう。
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枝の状態(枯れ枝、込み合った枝)
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新芽の位置
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木質化しているかどうか
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花が終わっているかどうか
これらを確認しておくことで、どこをどう切るべきかの判断がしやすくなります。
強剪定のタイミングは初春または花後すぐ
ラベンダーの強剪定に適した時期は、春の芽吹き前(3月中旬〜4月初旬)または夏の開花直後(7月頃)です。真夏や真冬は株にダメージが残りやすいため避けましょう。剪定の時期を誤ると、翌年の花が減ったり、枯れ込む原因になります。
どこまで切る?切る位置の目安
強剪定のポイントは「緑色の柔らかい茎の部分を必ず残す」ことです。
ラベンダーの枝の下部は木質化して茶色く硬くなっていますが、この部分は芽吹く力が弱いため、そこまで切り戻してしまうと新芽が出ず、最悪の場合その枝が枯れてしまいます。
やり方の手順:
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株全体の形を見て、バランスを取るようにする
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新芽が出ている位置から2〜3節上を残してカット
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木質化した部分に入らないよう、必ず緑の茎の部分で止める
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高さを整えると同時に、内側に向いた枝や交差している枝を間引く
ラベンダーの剪定しすぎに注意
よくある失敗の一つが、剪定しすぎて回復できなくなるケースです。剪定後に葉が少なくなりすぎたり、緑の部分がほとんど残らないと、新芽を出す体力が残らず枯れてしまう恐れがあります。
剪定後の株は一時的に元気がなくなることもありますが、数週間で新芽が出てきます。水やりや肥料は控えめにし、根に負担をかけずゆっくり回復させましょう。
剪定してはいけない時期と剪定しすぎによる失敗例
ラベンダーは剪定によって形を整え、健康的な株に育てることができますが、タイミングを誤ると大きなダメージにつながる植物でもあります。特に「剪定してはいけない時期」や「剪定しすぎ」は、枯れる原因になりかねません。ここでは避けるべき時期と失敗例について紹介します。
剪定してはいけない時期とは
ラベンダーにとって避けるべき剪定時期は、真夏と冬です。
真夏(8月中旬〜9月前半)
夏の暑さが厳しい時期に剪定を行うと、強い日差しと高温で剪定後の株が回復できず、葉焼けや枝枯れが起こることがあります。剪定を行うなら、花が終わった直後の7月中旬までに済ませておきましょう。
冬(11月以降〜2月)
寒さの厳しい冬はラベンダーが休眠期に入るため、剪定によって株にストレスをかけると、春までに芽吹かずそのまま枯れる可能性があります。特に霜が降りる地域では冬の剪定は厳禁です。
剪定しすぎのリスクとよくある失敗
ラベンダーの剪定で最も多い失敗は、木質化した部分まで深く切りすぎることです。木質化部分には再生力がほとんどなく、葉が出ないため、その枝は枯れ込むことが多くなります。
失敗例:
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株全体を短くしすぎて、緑の部分がなくなった
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一気に全体を強剪定してしまい、株が再生できなかった
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剪定後に雨が続き、切り口から腐ってしまった
剪定失敗を防ぐためのポイント
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剪定は晴れた日に行う
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緑の部分を必ず残すようにカットする
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1年に2回の計画的な剪定で強剪定の必要を減らす
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剪定後は株の様子を見ながら水やりを控えめにする
地植えラベンダーをコンパクトに保つ剪定の年間スケジュール
ラベンダーを美しく、そして長く育てるためには、年に2回の剪定を基本とした年間スケジュールに沿った管理が効果的です。特に地植えのラベンダーは成長が早く、放置しておくと枝が暴れて横に広がり、花付きも悪くなってしまいます。ここでは季節ごとの適切な剪定のタイミングと作業内容を紹介します。
春(3月〜4月):更新剪定と形づくり
冬を越えたラベンダーは、枝先が傷んでいたり、枯れていたりする部分が出てきます。この時期には古い枝をカットし、新芽の上で切り戻すことで、健康な芽の伸びを促進します。
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冬枯れした枝を剪定
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新芽の少し上で切る
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株の形を整える(ドーム状を意識)
この春の剪定は、その年の花付きに直結する大切な作業です。
初夏(6月中旬〜7月):花後の切り戻し
ラベンダーの開花が終わったら、花茎を付けた枝をカットします。この時期の剪定は、次の芽吹きを促す整枝の意味合いがあり、花がらを放置すると株が疲弊しやすくなります。
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花がらのすぐ下でカット
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形が乱れている部分を短く整える
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広がりすぎた枝を切り戻す
この時期の剪定は、秋〜翌春の株姿に影響するため、しっかり行いましょう。
秋(9月〜10月):基本的には軽めの整理
気温が落ち着き、成長が緩やかになるこの時期は、軽い剪定や整理程度に留めるのが無難です。木質化した部分を無理に切ると、回復しづらくなります。
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飛び出した枝だけ軽くカット
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形を軽く整える程度に留める
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株元の枯れ葉やごみを取り除く
冬(11月〜2月):剪定は避けて休ませる
ラベンダーは寒さに強い一方で、冬は休眠期に入ります。この時期に剪定すると株にダメージを与えてしまうため、基本的には何もしないことが推奨されます。積雪や霜の影響がある地域では、株元をマルチングして保護すると良いでしょう。
ラベンダーの地植え管理まとめ:広がりすぎを防ぐには剪定がカギ
ラベンダーを地植えで育てると、年々株が大きくなり見応えが出る反面、放任すると広がりすぎて管理が難しくなることもあります。特に枝の剪定と根の張り方に着目した管理を行うことで、長く健やかに楽しむことができます。
ポイントを以下にまとめます。
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ラベンダーは浅く横に広がる根を持つため、植え付け場所に注意が必要
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春と夏(初秋)の年2回の剪定で、花付きと株姿をコントロール
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剪定は緑の茎を残すのが基本。木質化した部分まで切りすぎない
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剪定してはいけない時期(真夏・冬)を避けることで枯れのリスクを防げる
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3〜5年に1度は株の更新も検討し、長期的に維持する視点を持つことが大切
ラベンダーの剪定や広がりすぎ対策は難しそうに思えますが、自然のリズムに合わせたお手入れを意識すれば、誰でも美しく育てることができます。庭に植えたラベンダーが、年々風景の一部としてなじんでいく姿は、ガーデニングの大きな喜びの一つです。