

梨とリンゴは見た目が似ていても、枝の伸び方や結実する枝の種類に違いがあるので、それぞれに合った剪定方法とお手入れについて本記事では解説します。
梨・りんご(林檎)について
梨とりんごの違い
梨

バラ科ナシ属の植物で、自然状態では高さ15〜20mにもなる高木になり、一般的に枝が比較的まっすぐ上に伸びる傾向がありますが、栽培においては、収穫作業や管理のしやすさから、2〜3m程度の高さに仕立てられることが多いです。
りんご

バラ科リンゴ属の植物で、自然状態では、高さ7〜10m程度の高木になります。梨に比べて、枝が斜め上や横方向に広がる傾向があり、栽培においては、梨と同様に2〜3m程度の高さに整えられます。
開花時期は梨の方がリンゴよりもわずかに開花が早い傾向があり、梨は初秋(8月下旬〜10月頃)に旬を迎える品種が多いのに対し、リンゴは初冬(9月下旬〜11月頃)に旬を迎える品種が多いです。
産地については、リンゴは比較的冷涼な地域(青森県、長野県など)での栽培が盛んな一方、梨は比較的温暖な地域でも栽培されています。
剪定が必要な理由
果樹栽培において剪定は、収穫の質と量を左右する非常に重要な作業で、特に梨とリンゴは、多くの品種が枝の先端よりも側芽や短果枝に実をつける性質があり、剪定によって枝の配置を適切に保つことで、日当たりや風通しを確保し、健全な果実の成長につながります。
梨やリンゴの木は、毎年枝を整理すると健康な枝に光と風を届けやすくなり、実のつきやすい環境を作ることができます。
放置すると枝が重なり合って木の内部が暗くなり、徒長枝ばかりが育って実がならない木になってしまい、梨とリンゴでは実をつける枝のタイプや生長の仕方が異なるため、それぞれの特性を理解した剪定が求められます。
梨・りんごの剪定について
梨・りんごの剪定時期は12~2月
剪定を行う時期は、木の生長サイクルと密接に関係しています。梨とリンゴはどちらも落葉果樹であり、休眠期(葉が落ちている冬)に剪定するのが基本です。
梨の剪定時期
梨の剪定は、12月〜2月が適期で、剪定によって、前年に実をつけた枝や混み合った部分を整理しますが、梨は短果枝や中果枝に実がつく性質があり、これらを意識的に残すことが重要です。
りんごの剪定時期
りんごも同様に12月〜2月が最適とされますが、品種によっては3月上旬まで剪定が可能なものもあり、リンゴは短果枝と結果枝に花芽がつくため、伸びすぎた枝を整理して光が当たるようにします。
梨・りんごの剪定手順
剪定を成功させるためには、どの枝を切るべきか、残すべきかの見極めが重要です。
枝の種類と見分け方
- 短果枝(たんかし):花芽がつきやすく、実をつける大事な枝
- 長果枝:勢いが強くなりすぎることが多いため、整理対象に
- 徒長枝:直立して勢いだけがある枝で実はつかず、木の養分を消耗する
●基本の手順
- 全体を観察して骨格枝を確認
- 実がついた枝や古くなった枝を間引く
- 勢いよく伸びた徒長枝を付け根から切除
- 混み合っている部分の枝を整理して、日当たりと風通しを確保
- 翌年も実をつけそうな短果枝を優先して残す
梨・りんごの剪定の違い
梨の整枝法(開心自然形)
主幹を低く保ち、枝を放射状に広げることで果実の取りやすさと日照を確保
リンゴの整枝法(主幹形・変則主幹形)
幹をまっすぐに伸ばし、1段ごとに枝を配置して高さを利用する
梨は比較的枝が横に広がりやすく、開心自然形で育てられることが多い一方、リンゴは主幹形に仕立てるのが一般的で、いずれもバランスの取れた樹形が大切です。
片側ばかり剪定したり、日当たりのいい部分だけに枝が集中したりすると、木全体の健康を損ねてしまうので、樹形を意識しながら剪定すると風通しが良く実のなる木へと仕立てていくことができます。
剪定のよくある失敗とケア
剪定でよくある失敗
切りすぎてしまう
花芽がついた枝まで切り落とすと、翌年の実つきが極端に減ることもあるので短果枝はなるべく残すよう意識しましょう。
徒長枝を残してしまう
まっすぐ勢いよく伸びた徒長枝は、木の栄養を吸い取るだけで、実がつきにくい枝なので適切に見極めて根元からカットすることが重要です。
切り口の位置が悪い
枝を中途半端な位置で切るとそこから枯れ込みや病害が起きることがあるので、枝の付け根ギリギリ、または節のすぐ上で斜めに切るのが理想です。
剪定後のケア
剪定が終わった後も、木の健康を保つために大切な管理があり、特に切り口のケアや栄養補給によって、木の負担を軽くし翌年の生長を促すことができます。
切り口の保護
大きな枝を切ったあとには、切り口に癒合剤を塗ることで、乾燥や病原菌の侵入を防ぐことができ、特に冬の剪定は乾燥しやすいため、太い枝ほど丁寧なケアが必要です。
樹勢のバランスを意識する
梨とリンゴは、品種によって木の強さや枝の伸び方に違いがあり、弱りがちな品種はあえて剪定量を控えめにすることで、体力を保たせることができます。
翌年の実つきへの影響
剪定後は、短果枝が残っているか、日当たりが確保されているかを確認しましょう。
枝の数が少なすぎると、花芽が不足し、収穫量に直結しますが、剪定直後はややスカスカに見えても、春からの芽吹きで新しい枝が出てくるため心配は不要です。
梨・りんごの剪定|まとめ
本記事では梨・りんごの剪定について詳しく解説しました。
- 梨とリンゴでは、枝の伸び方・実をつける枝のタイプ・整枝の仕方が異なる
- 12月〜2月に徒長枝・混み合い枝を整理し、短果枝は積極的に残す
- 剪定後は切り口の保護と品種に合わせた管理を行う
梨もリンゴも、剪定を丁寧に行えば、毎年豊かな実りと美しい枝ぶりを楽しめるので本記事を参考に果樹との付き合いを深めていきましょう。